ホエールスイムについて想う事・・・。

ホエールスイムについて想う事・・・。

 

皆さん、こんにちは。ザトウクジラシーズンも終わり、ほっと一息の久米島からです。今年も、色んな出逢いがあり、大きな事故もなく無事終えられた事に感謝してます。

思い起こせば、20数年前、ザトウクジラと泳ぐ概念さえない時代に、ゲストなしの自分独りの手探りで始めたホエールスイムですが、色々と困難な事も多くありました。

始めた当初から、他のエリアの水中スイムなしのホエールウォッチング業者や協会から、「クジラが嫌がり良くないので、クジラと泳ぐのはやめてください」というクレームが毎年ありました。

僕は、その都度、僕が水中で観察した光景や写真なども交えて、「クジラが嫌がっているなら、この様な行動や光景はないと思います」と感情を抑え粘り強く説明したものでした。

(もちろん、それらの関係者の方々には、それぞれの考えや想いがあり、その根底には、ザトウクジラ達に又帰ってきて元気な姿を見せて欲しいというクジラ愛に満ちたものだと理解していました。

そして僕も当初は解らずにクジラに対して無茶なアプローチをしてた事もありましたから、それを懸念してのご意見だったという事も)

そのうち、僕個人に直接言っても効果がないとなったのか?周りの関係各協会、久米島ダイビング協会、久米島観光協会や役場の観光課、久米島漁業協同組合などや、

久米島仲里村や久米島町の議員に他の島の議員からホエールスイムに対するクレームがいく様になり、毎年、それらのクレームが入る度に、役場や観光協会に呼ばれては、

ともすれば非常識や酷い時には極悪人の誹りを受けながらも、何故解ってくれないのか?という叫びたくなる様な感情を押し殺し、出来る限り丁寧に、写真を見せ行動を説明しながら理解してもらおうと努めました・・・。

本物のザトウクジラを水中はもちろん、船の上からさえ見た事のない人達に、出来る限り解り易く・・・。

ある頃から、ザトウクジラの水中観察撮影が、ライフワーク・生きがいとなっていた僕は、何時、そのクレームの数々が久米島のそれらの人達の臨界点を超え、

もしかしたら、来期はホエールスイムを出来なくなるかもしれないという恐怖心に、いつも怯えながら奮闘していました・・・。

10年前に、久米島漁業協同組合がある水族館の元館長を招いて講演会を行った際、他のエリアのホエールウォッチング業者の意向を汲んだのか?!講演中にザトウクジラの水中スイム観察の事にも触れ、

止めた方がいいと発言され、その時には随分と久米島内でも、劣勢に立たされたものでした・・・。

「止めた方がいい」・・・、何故、そんな風に言われるのか?・・・それは、それを言う人達は、誰も、水中でザトウクジラと真剣に向き合った事がないので知らないからなのです・・・。

ただ、真剣にやった事がないし解らないから、止めておいた方がいい、それが大勢の意見でした。確かに、人間が泳いで近寄る事を嫌がるザトウクジラもいます。

その時のクジラ達には、何をどう頑張ってもあまり近寄れませんし、水中で観察撮影出来るのは、ザトウクジラ自らが僕らを近寄らせてくれた時だけです。

だからこそ、その出逢いに恵まれた時だけ、奇跡の時間が訪れるのです。

ここまで、ホエールスイムが許される様な風潮になったのは、ここ数年で、僕の実感でも、5年ほど前からではないでしょうか?!

もしかしたら、20数年前に始め、スイムを行なっていたお店が当店だけだったホエールスイムも、僕が、どこかでそういう力に屈して諦めていたら、

国内でのホエールスイムの現状は今とは変わっていたかもしれません・・・。

 

今では、少しずつホエールスイムをする業者も増え、中には、「うちもやってみようか?!」ぐらいの軽い気持ちでやり始める業者もあると聞きます。

SNS上でも、沢山のホエールスイムの写真が投稿される様になり、昔の非常識が今の常識とまではいきませんが、ホエールスイムも、少しずつ認知され始めています。

でも、だからこそ忘れてはならないのは、開催する業者や個人の責任です。もし一度、有ってはならないクジラとの水中での事故、ホエールスイム時のボートの人身事故など何かが起これば、

その責任は、一個人、1ショップ止まらず、今のこの風潮は、一挙に逆転し、以前の様な状況のホエールスイムをする事自体が非常識となってしまうかもしれない

という危機感を、よくよく心してツアーを開催して欲しいものです・・・。

よく同業者から、「親子クジラは、ゆったりしてるからゲストだけでも安全だ」と聞きますが、寄って来てくれるからこそ、遊んでくれる?からこそ、そこに危険もあると言う事を認識して欲しいのです。

そもそも、ザトウクジラに、人間の言う遊ぶという概念があるのかどうかも解らないし、子クジラが近付いて来た時に、不意に姿勢を変え、たまたま、ダイバーが

触ってしまった時、子クジラが慌てふためいた時に、どういう行動をするのか?予測出来ない事だってあるのですから・・・。

想像するだけでも恐ろしいですが、もし、不意に向きを変えた子クジラの尾鰭の上に、ファイダー越しに夢中になって撮影していたダイバーの顔や頭があったとしたら・・・。

「近付き過ぎなければ安全」・・・確かにそうです・・・。

ただ、浮上中や水面を泳いでいる子クジラが、自らダイバーに寄って来て、遊びに(?)来る子クジラのあどけない仕草や表情は、とても魅力的で、子クジラが

寄って来ても動かないでと、どれほど一緒に入っている僕らガイドが事前に説明していても、その意識なく、つい近寄ってしまうダイバーは意外に多く、

僕が止めにいく事もままあります・・・そこで何事もなく収まっていますが、もし、ゲストだけで入っている時に、誰も止める人が居なかったら・・・、

その時、たまたま不幸なタイミングやクジラの予測出来ない動きがあったとしたら・・・。

子クジラでも人間の大人の大きな男性以上の大きさ、体重は数倍、泳力はもちろん、物凄いパワーがあります。それが、不意の偶然で恐ろしい事にもなり兼ねないという事を、もう一度よくよく考えて欲しいのです・・・。

杞憂であれば、それが、どれほど良いかと思いますし、願います・・・。

僕が、これまで、自分の怪我を含めて、大きな事故もなく、やってこれたのは、運が良かっただけかもしれないと、いつも思い返しています・・・。

先日、奄美クジラ・イルカ協会会長の興克樹さんとも、その危険性など、よくよく話し合い再確認し、これからのホエールスイムの方向性みたいなものを話し合いました。

そして、これまでも他の島やエリアのガイドさんが勉強に来てくれれば、伝えられる出来る限りの事を伝えてきました・・・。

これからも皆んなが安全に、ホエールスイムが出来る様に・・・。