こんばんは
海だよりの中村です。
このブログを書く時はどんな話を載せようかと、いつも悩み内容を考えています。
今回はトノサマダイの話です。
長崎の外海側のポイントに行くとエダサンゴが一面に茂る場所があります。
日本全域で見れば珍しくない光景かもしれませんが、対馬暖流域である長崎でここまで群生する場所はそう多くありません。
そしてこのサンゴには夏から秋にかけて季節来遊漁であるチョウチョウウオの幼魚たちがたくさん流れ着きます。
トゲチョウチョウウオ、フウライ、アケボノ、ヤリカタギ、そしてトノサマダイ。
しかし、この中に長崎で越冬できるチョウチョウウオは1種類もいません。
(※男女群島等はまた別で長崎本土での話です)
長崎で越冬を確認できたのは、チョウチョウウオとツキチョウチョウウオくらい。
僕が水族館の飼育員だった頃、水族館の倉庫には他の水族館が発行した蔵書が数多く保管されていました。
それを読み漁っていた時に、とても印象に残る記事を見つけました。
それは串本海中公園が1960~70年頃(詳しくは忘れちゃいましたが)に発行したもので、
確か串本沿岸で見られるチョウチョウウオ類が調査された内容でした。
串本と言えば、言わずもがな数多くのチョウチョウウオ類が普通に越冬しているエリアですが、
その文献には、季節来遊漁として現れたチョウチョウウオの多くが死滅すると書かれていました。
そして、その中で最も多く現れるのが「トノサマダイ」だとも書かれていました。
長崎では上述した通り、ほとんどのチョウチョウウオ類が死滅していますが、最も多く現れる種類がトノサマダイです。
そして来遊漁の中でも最後まで姿を観察できるのもトノサマダイです。
鹿児島の錦江湾で潜っていた頃も、トノサマダイとトゲチョウの成魚はいるものの、他の成魚はほとんど見ませんでした。
(坊津等の外洋側へ行けば多くの種類が越冬していますが、内湾である錦江湾は水温が2度以上下がる為環境が異なるのです)
冬場の錦江湾は水温が15℃(※今は16℃との話も聞きます)、長崎は最低水温が13℃です。
それを考えると、トノサマダイは恐らく15℃が越冬できる目安となり、チョウチョウウオに次いで低水温に強いのだと思います。
もしかすると串本も当時は最低水温が15℃以下、あるいはその前後だったのかもしれませんね。
そして長崎の海もまた当時の文献に書かれた串本と似た環境であるならば、この先の何年後・何十年後にはトノサマダイが普通に越冬する海になるのかもしれません。
僕はいつもトノサマダイを見る度にそんな事を考えています。