2匹でいるということ

2匹でいるということ

緑雨滴る鹿児島の海より松田がお届けいたします。

この5月〜6月にかけての水の色の変化、生物の僅かな機微の変化、もちろん水温の変化など、冬に退化していた感覚を極限まで一気に高めねばついて行けない感覚は一年のうちで最も刺激的です。

現在はスズメダイやギンポの多くの仲間は産卵床作りに忙しなく、繁殖行動そのものよりも、それまでの行動や段階をガイドすることも多く一層地味な感じで推しております(笑)

ところで、この写真は2匹で佇むトラギスですが、この季節2匹で泳ぐ魚をよく目にします。

この写真自体は産卵前のオスが忙しなくメスに寄り添い産卵を促すシーンですが「2匹でいる」ということに着目し、潜ると何か物語が見えてくるかもしれませんね。

最近では多くのダイバーから「生態写真」を撮影したい!とリクエストをいただきますが、激的なシーン!特に産卵の瞬間などだけではない、このような寄り添い2匹でいることの「理由」を連想させるようなシーンも是非大切にしてほしいものです。

 

ヒメギンポの産卵シーズンを終えるといよいよタテジマヘビギンポの産卵シーズンです。

南さつまエリアでは17℃〜19℃の水温でヒメギンポの産卵を観察し(10年前は16℃で観察していた)5月の黒潮接岸時のドン!!と水温が2℃程上昇するのが縦縞ヘビギンポのトリガーになっているようにこの数年の観察で感じます。

彼らも日頃は単体で潮通しの良い岩陰に佇んでいますが、時期になるとオスの周辺にプックリセクシーボディのメスがおりますので、雌雄の識別を身につけた上で観察すると面白いものですよ。

 

さて、日本各地で撮影されるアオリイカの産卵ですが・・・・・・

多くはイカ芝での観察や撮影かと思います。

私自身はイカ芝について否定的ではありませんが、それを見たダイバーの多くは「アオリイカはイカ芝」で産卵を見るものだ!!と自然と刷り込まれていることに疑問を感じます。

本来は、海藻やサンゴの仲間に産卵する「自然の姿」があったわけですが、その環境が「なくなってしまい」致し方なく、或いは人間が観察しやすいようにそれを設置しているだけなのです。

南さつまのエリアでも、ホンダワラ類(ガラモ)が沿岸部を覆っていた頃は、沢山イカの卵がぶら下がっていたと聞きます。

今では、サンゴの海に変化し多くはスギノハミドリイシに産卵するようになってきました。

 

そんなスギノハミドリイシもレイシガイの食害が主な要因で私たちが案内するエリアの8割は死滅しつつあります。

写真のアオリイカは枯れ果てたサンゴに懸命に産卵するメスのアオリイカです。

当初、私は「なぁぁ〜〜〜んだ!枯れたサンゴに産卵できるならイカにとってはサンゴは枯れても大丈夫なんだな・・・・・・」なんて悠長なことを考えていた記憶があります。

 

 

しかし、昨年枯れたサンゴに産卵をしていた場所はサンゴの造形はなく、崩れ去ってしまい、ただの「がれ場」と化しアオリイカが産卵する空間はなくなってしまったのです。

サンゴが群生する程の一等地は今ではカギケノリの群生地となっていたのです。

このように日本各地のアオリイカも「今」残された環境を上手に活用し産卵しているはずです。

イカ芝での観察でアオリイカとの接し方を身につけ、「自然環境下」での産卵も狙ってみてくださいね。

以上、「2匹でいる意味」「そこで産卵をする意味」をお伝えしたく今月のガイド会ブログでした〜

 

鹿児島県鹿児島市下福元町7641

ダイビングショップSB

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