年間を通して最も寒く冷たい鹿児島より松田がお届けいたします。
水温の下がるこの時期をうまく活用する生物達や新たに芽生える海藻など、日々目まぐるしく海中は変化します。
お伝えしたいことは、あり過ぎて上手くまとまらないので、今回はダンゴイカの仲間について3年前から追っていた「産卵」について書こうと思う。
僕の追っていたダンゴイカの仲間の情報は、地域性やその海中環境により大きく異なることもあるのでその点ご留意下さい。
まず初めに産卵は12月の中頃、水温は20°台に突入した頃に水深20m〜35mの岩礁に産卵する事が数年のデータからわかった。
錦江湾は桜島の麓の海では、火山性の軽石が海底に多く転がっており、その側面や裏面に多くは産卵していた。
産卵のタイミングには大きく潮が関係していることも今回の調査でわかってきた。
特に大潮前後に産卵は活発化しており、大潮ど真ん中での激しい潮流の最中には、遊泳力の乏しい彼らは盛んに産卵をしないのだと推察される。
日の入りから明け方まで潜り、ベストな潮や水深・場所・時間を探るのには多くの時間を費やするものなのです。
その中でも最も苦労を強いられたのは「時間」でした・・・・・・(本当に血反吐でるくらい苦労した〜〜〜)
結果的には20時〜深夜の時間帯にまで及び、幅のあることも判明しました。
多くのイカの仲間の産卵と同様に、エリアと時間がある程度判明したら、まずはその日に産んだ「真新しい卵」を探します。
と言っても数粒の時(産卵が始まって早い段階)に探します。(卵の大きさは3m m〜5m m程)
上記の写真はその日に2時間程かけて産卵した10数粒の卵。
海底の砂に潜っている彼らは、産卵の時以外は海底に伏していたり海藻に隠れていたりとイカそのものの存在を認識して産卵を観察することは困難な為です。
5分に一度泳ぎ、岩の側面に一粒一粒大事そうに産みつける姿はなんとも愛おしいです。
それから、最初に書き記した産卵の水深はこの2月に入り5m〜10mの浅い水深へと著しく変化しています。
これは、例年通りのパターンで季節が巡り水温も浅場は下がり、ダンゴイカの仲間にとって行動しやすいものになったからだと言えるでしょう。
100例くらい見てから語るべきかも知れませんが、多くは体色が黒っぽくなり産卵している個体が多く、これも暗闇で産卵する際に外敵に自身の存在が判りにくくする為だと推察されます。
そんな中、一例だけ暗所でも一際目立つ体色を白くさせて産卵をする個体がいたので載せておきます。
※卵の表皮を剥いたり、剥がしたりはしておりません。そのまま観察しています。
少し背景にも写り込んでいますが、ダンゴイカの仲間の卵は産卵後に砂などの付着物が着き周囲の物と同化し守られています。
中には様子が見えるものもあるので撮影すると、中の稚イカが可愛らしいものです。
小さな小さな稚イカが自分の体とり随分と大きい栄養嚢の上に乗り、卵の中で成長している様子がわかります。
と・・・・・・産卵後の卵の観察もこれまで通り楽しいです。
まだまだ、謎多きダンゴイカの仲間の生態ですが少し、ほんの少し爪先がその神秘に触れるところまできたかも知れません。
皆さんも日頃から見る生き物達の少し踏み込んだ姿を求め、ダイビングや撮影を楽しんでくださいね。
寒い時には寒いことを嬉々とし上手に利用する生き物達も沢山いるのです。
鹿児島県鹿児島市下福元町7641
ダイビングショップSB